歌手 LiSA・自分が納得できないと人の心にも届かない【Heroes File】

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第一線で活躍するヒーローたちの「仕事」「挑戦」への思いをつづる

歌手 LiSAさん

TVアニメ「鬼滅の刃」のオープニングテーマ「紅蓮華」と、『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』の主題歌「炎」の大ヒットで一躍人気歌手となったLiSAさん。でも、幼い頃から自分に自信がなかったせいか、誰かに褒められることや、誰かのために何かできないかといったことに気持ちが向いていたという。
「身長が高いことを生かすならキャビンアテンダントかな」と思った頃もあるそうだ。しかし考え抜いた末、たどりついたのは音楽だった。
そんな、紆余(うよ)曲折を経て今に至るまでをLiSAさんに聞いた。

Profile

リサ/1987年岐阜県生まれ。バンド活動を経て2011年にソロデビュー。19年4月に配信を開始した「紅蓮華」、20年にリリースした「炎」が大ヒットし、2年連続でNHK紅白歌合戦に出場。21年5月19日にはデビュー10周年ミニアルバム「LADYBUG」(全曲新曲)を発売。

TVアニメ「鬼滅の刃」のオープニングテーマ「紅蓮華」と、『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』の主題歌「炎」が大ヒットしたLiSAさん。2021年、ソロデビュー10周年を迎え、5月19日に記念のミニアルバム「LADYBUG」をリリースした。B'zの松本孝弘さん、ゆずの北川悠仁さんら豪華アーティストとのコラボ楽曲を含む全7曲。「強い個性を放っているクリエーターの方々と制作することができ、本当に感謝しています。私自身のこれまでの集大成ではなく、ここから先へ進んでいくための、大切なアルバムとなりました」

子どもの頃から歌が好きでミュージカルやダンスのスクールへ通った。中学からはバンド活動も始めている。そんな中で明確に歌手になりたいと思ったのは20歳の頃だという。「音楽をしていても『歌手になりたい』というのは口にしてはいけない気がして、日々アルバイトをしながら何となくバンドを続けていました。でも、周りの友人たちが現実的な目標に向かって就職し始めて。その時、改めて自分には何ができるんだろうって考えたんです。そこでやはり私には音楽しかないと確信しました」

歌手を目指して上京。「家出同然だったので、自分には帰る場所はないんだと覚悟しました」。バイトを掛け持ちしながら数々のオーディションを受け続けた。「自分にできることは何か、自分が受け入れてもらえる場所はどこにあるのかとずっと探す日々でした」

歌手 LiSAさん

そんななか、ついに大きなチャンスが巡ってくる。TVアニメ「Angel Beats!」の劇中バンド「Girls Dead Monster」(通称ガルデモ)のボーカルを担当する仕事だ。「アニメは少し縁遠いものでしたが、バンドはしていたのでそれなら自分にもできるかもしれないと思い、迷いませんでした。ただ、アニメファンの皆さんに受け入れてもらえるだろうかという不安はありました」。それが、ガルデモは絶大な支持を受け、シングルアルバム累計40万枚以上をセールス。その実績が評価され、11年に見事、ソロデビューを果たす。

「CDが発売されるまで信じられませんでした(笑)。長年の夢がかなってすごくうれしかった。でも、その時すでに23歳。デビューとしては遅く、絶対に失敗はできないと思いました」

もともと臆病な性格。手にしたものを失うのは怖かった。「だから決めたんです。自分にウソをつかない、納得できないことや後悔することはやらない、目の前のことに誠実に向き合うっていうルール。自分に対して後ろめたさがあったら、人の心に届く歌なんて絶対に歌えないと思ったからです」


「今日はいい日だっ」で自らを鼓舞する

歌手 LiSAさん

圧倒的な熱量のパフォーマンスと歌唱力で、聴く人を魅了してやまないLiSAさん。歌手という夢をかなえたことで、「音楽を通して一瞬で誰とでも仲間になれることがうれしい」と話す。「この間も、私の曲『紅蓮華』を歌う子どもたちと街で出会って話をしました。こんな風に、知り合うはずのない人たちとすぐにつながることができるのがこの仕事の魅力です」

もちろん、つらくて苦悩することも多々ある。14年、初めての日本武道館ライブもその一つ。「体調があまり優れず、うまくいかなくて。ソロデビュー以降LiSAとして完璧に活動してきたという自負があっただけに、舞台上で歌いつつ、もう終わりだ、誰も私の歌なんて聴いてくれなくなると落ち込みました」

でも、最後まで一緒に歌ってくれるファンが多くいた。「その光景が本当にまぶしくてうれしくて。失敗があっても愛情を注いで誠実に届けようとすれば、ちゃんと伝わるんだって。これからは自分の夢のためではなく、歌を聴いてくれる人たちのために歌おうと誓いました」。こうして翌年の武道館ライブは大成功を収めた。

とはいえ、前向きな気持ちが一つ増えても不安は自然と押し寄せてくる。30歳を迎えた時も「自分は何歳までエネルギッシュなライブができるんだろう」と思い、怖くなったという。ただ、そんな風に繰り返すネガティブな気持ちをそのつど振り払うために、LiSAさんは「今日もいい日だっ」を座右の銘にしている。

「上京前、母が私を励ますために言ってくれた言葉です。小さい頃から私が落ち込んでいると、母は『一緒に幸せ探しをしよう』なんてワクワクするような言葉を投げかけてくれました。そういった母の思いを集約したのが『今日もいい日だっ』なんです。自分を鼓舞したい時には必ずつぶやくようにしています」。最新ミニアルバム「LADYBUG」に収録されている「Another Great Day!!」にはこの座右の銘への思いが刻まれている。

今のLiSAさんにとって仕事とは人に喜んでもらうことで、そのために努力すること。「モチベーションは、私の歌を満面の笑みで楽しんでくれる人たちの存在です。そういう人たちに向け、これからも歌い続けたい」。さらに「紅蓮華」「炎」という大ヒット曲ができたことで、死ぬまでこの楽曲を今の声でちゃんと歌い続けるという使命もできたとほほ笑む。

悩んで、立ち直って、また悩む。その繰り返しから逃げず、常に自分と向き合い、何をすべきかを考えながら行動してきた。そんなパワーのあるLiSAさんの歌声だからこそ、人の心を打つ、生きるエネルギーを与えてくれる。


ヒーローへの3つの質問

歌手 LiSAさん

Q 現在の仕事についていなければ、どんな仕事についていたでしょうか?

幼い頃はキャビンアテンダント(CA)になりたかったですね。背が高いのがずっとコンプレックスだったのですが、CAならむしろそれが長所となって生かせるかなって。もう一つはカメラマン。デビュー後、SNSに載せるため自分で写真を撮るようになって、それから憧れるようになりました。人の大切な一瞬を切り取る仕事って素敵だなと思います。

Q 人生に影響を与えた本は何ですか?

小池一夫さんの『だめなら逃げてみる 自分を休める225の言葉』です。本質を突く人生訓フレーズが225も収録されています。許せないこと、悲しいことがあったりするとパッとめくって読んでいます。ダメな自分を許すための処方箋(せん)みたいな一冊です。

Q あなたの「勝負●●」は何ですか?

ライブやTVに出演する直前、必ず一人になれる集中タイムを作ってもらい、不安を振り払うため鏡の中の自分に向かって「大丈夫!」と3回唱えます。自らに魔法をかけるような感じですね。


Information

アルバム「LADYBUG」発売中!

2021年4月にソロデビュー10周年を迎えたLiSAさん。そのアニバーサリーミニアルバム「LADYBUG」が5月19日(水)にリリースされた。B'zのギタリスト・松本孝弘さんがサウンドプロデュース(作曲・編曲)を手がける、映画『地獄の花園』の主題歌「Another Great Day!!」を始め、6月25日(金)公開予定の映画『夏への扉 —キミのいる未来へ—』の主題歌「サプライズ」、そして4人組バンド、女王蜂のボーカル・アヴちゃんプロデュース(作詞・作曲・編曲)による「GL」、ゆずの北川悠仁さんが作詞・作曲を手がける「ノンノン」など、ロック、ポップ、パンクなどのジャンルを飛び越えた多彩な楽曲が収録されている。「私のこれまでのまとめではなく、10年間続けてきたことへのお祝いであり、ここから先へ進んでいくためのアルバムです。なかなか思うように動けない時期が続きますが、自分の気持ちをワクワクさせたい! 何か音楽で発散したい!って思った時に聴いてほしいです」とLiSAさん。