管理職にならなければ「楽」か? 越川慎司さんに管理職のメリット・デメリットを聞いてみた

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「トップ5%社員」シリーズの書籍や鋭いキャリアの考察でおなじみの、コッシーこと越川慎司さんの記事第2弾。今回はMEETS CAREER(ミーツキャリア)の記事をもとに、音声プラットフォーム「Voicy」で「管理職」についてトークしていただきました。その内容をレポート記事としてお届けします。

「大丈夫、大丈夫」と、働く人にいつも温かいエールを贈ってくれる越川さんの「管理職論」。定義からメリット、デメリット、「自分が主役のキャリア」を築くうえで大切なことなど、必見の内容です。

「管理職とは?」の定義をまずは改めて整理しましょう

今回ピックアップする記事は、MEETS CAREERの「管理職はコスパが悪い? 管理職のメリット・デメリット・なりたくない人がすべきこと」。これはすごく興味深いですね。

私は以前、「Voicy」にて、「キャリアアップの一つの手段として、管理職への昇格を考えてみては?」という趣旨の配信を行ったことがあります。この記事はそのときに話した内容ともリンクしているので、とても読みやすかったですし、共感しやすかったです。

記事ではまず「管理職とはどういう人なのか」が定義され、「役員との違い」や「一般社員の違い」について解説されています。「管理職の役割と仕事内容」についても、5つに整理してくれています。1つ目は「業務の管理や改善」、2つ目は「労務管理」、3つ目は「人材育成」、4つ目は「チームづくり」、そして5つ目は「経営理念の浸透」です。

こういう整理がすごく重要ですよ。実態がよくわからないものに対しては、自分の思いを寄せられないですよね。「何となくこういう役割の人?」とか、「何となく中間管理職って残業代も出ないし、苦しそうだな」とか、一部分だけのイメージでは、自分のキャリアを投影しにくく、そうなりたいかどうかを検討しようという気にもならないですから。
まずはその定義と役割を整理することが重要ですので、ぜひ記事を参考にしていただければと思います。さらに、記事では管理職の役割を解説したうえで、その役割を果たすために必要なスキルとして、ヒューマンスキル(対人関係能力)、テクニカルスキル(業務遂行能力)、コンセプチュアルスキル(概念化能力)をあげています。

加えて、「管理職に向いているのはコミュニケーション能力が高い人」、「管理職にはマネジメント力だけではなく、リーダーシップが必要」と書かれています。逆に管理職に向かない人としては、「そもそも自分のマネジメントができない人」、「勇気を持って相手に任せることができない人」があげられています。

管理職に向いているのは、三者をハッピーにしたい人

僕がこの記事で注目するのは、管理職になるデメリットよりも、メリットのほうですね。
管理職になるメリットが5つ、記事には書かれています。

1つ目は、やはり「やりがいが増す」こと、2つ目は「仕事の推進力が身に付く」、3つ目は「収入アップが期待できる」、4つ目は「さらに出世できる可能性がある」、そして5つ目は「転職で有利になる」です。

この中で注目するべきは、1つ目の「やりがいが増す」ですね。僕はこれを「働きがい」ととらえています。

私が代表を務める株式会社クロスリバーでは、17万3000人を対象にアンケート調査を実施し、「あなたの働きがいは何ですか」と聞いたことがあります。回答の内容は、大きく3つに分けることができました。それは、「承認・達成・自由」です。

なかでも「達成」について見ると、「私の営業目標を達成できた!やった!」といった個人の達成だけではなく、「自分の達成よりも他者の達成をサポートしたい」という方が全体の17%を占めていました。

例えば、「みんなで助け合って、このイベントがうまくいった」といったチームの達成や、「手塩にかけて育てた後輩が、何とか達成できてよかった」というように後輩の達成に働きがいを感じるような方です。

この17%の人は管理職に向いていると、僕は思います。なぜなら、管理職になって他者の達成をサポートすることを本業にすれば、自分の働きがいが増すわけですから。自分がハッピーになり、周りの人も助けられてハッピーになる。それによってチーム全体が目標達成に近づけば、管理職の上司である部長や本部長も嬉しくなりますよね。

自分も嬉しいし、相手(メンバー)も嬉しいし、上司も嬉しいということで、三者をハッピーにする貢献に働きがいを感じる人は、管理職向きです。「三方良し」になります。

管理職は大変。とはいえ「大変ではない仕事」ってありますか?

管理職には大変なこともありますよ。何とかしなければいけないのが管理職ですし、日本では97%の人がプレイングマネージャーだから、平日の日中にはプレーヤーとして働き、平日の夕方とか土日にはマネージャーとして管理職の役割を果たさないといけないようなパターンも。「管理職はやらなければいけないことが多い」というのは、確かにそうかもしれません。

でも冷静に考えてみると、一般社員の方も大変でしょう。トラブルに対応しないといけないとか、お客さんに直接対応して無理難題を押し付けられるとか。経理部の方は決算前に忙しい、人事は採用で忙しい。楽な仕事なんてないのではないですか。

だから、大変なことや面倒くさいことばかりに目を向けてしまうと、本来獲得できるやりがい・働きがいを見失ってしまうと思うのです。僕は、不平・不満・不快を取り除くことよりも、嬉しいとか、楽しいとか、新たな経験ができるとか、プラス感情を増やしていったほうが働きがいを感じられます。

なぜなら、不平・不満・不快とはマイナスの感情なのだから、マイナスをなくしたとしても、0にしかならないからです。満足とか働きがいというのはプラスの感情で、不平・不満・不快を取り除くだけだと不十分。プラスの感情を増やすこと、それがやりがい・働きがいだと思うのですね。

上司の愚痴を言うのも、雑務をやるときに面倒だなと思うのもいいけれども、やっぱり自分の手でやりがい・働きがいのプラス感情を獲得するという意識を持っておかないと、「自分が主役のキャリア」を歩むことはできないと思うのです。

例えば車の運転で言うと、自分でハンドルを握って自分でアクセルとブレーキをコントロールして進んでいると、自分が運転している感覚があるじゃないですか。自分のキャリアについても同様で、自分で前に進めたいのであれば、自分でハンドルを握ってコントロールしているという「グリップ感」を得てほしいのです。

不平・不満・不快だけを考え、ブツブツ言いながら運転するのではなくて、未来にどういうことがあるのだろうと、自分が行きたい道にハンドルを切ってアクセルを踏み、進んでいくこと。そのためにやりがい・働きがいを意識していただきたいなと思います。

管理職ならではの「働きがい」「自由度」に目を向けてみよう

管理職には、管理職ならではのやりがい・働きがいがあります。さっき言ったように、個人の達成ではなくチームの達成のほうが嬉しいということもあります。加えて、自由度について言うと、「好きな仕事を好きなときに好きなようにやりたい」と思っている方もいると思うのですが、管理職になればそこをコントロールできる可能性が高まります。

例えばリモートワークを増やしたいなら、「うちのチームでは週1回ではなくて週2回にしよう」と、チームのリーダーが決断できますよね。こういった裁量権を増やすこと、つまり自分でコントロールできるエリアを増やすことが、僕はキャリアアップだと思うのです。

管理職は、自分でコントロールできるエリアを得やすいので、ぜひキャリアアップの一つとして、自分がコントロールできるエリアを増やす一つの手段として、管理職になるということを多くの方に検討していただきたいなと思います。

「管理職になるデメリット」の消し方

この記事に書いてある「管理職になるデメリット」については、確かにその通りなのですが、最後にそのデメリットの消し方を皆さんにお伝えしたいと思います。

記事中にあげられたデメリットは4つです。1つ目は「責任が重くなり、プレッシャーが増す」、2つ目は「プライベートの時間が減る」、3つ目は「人間関係の悩みが増える」、4つ目は「残業代がつかなくなる場合がある」です。一つずつ解決策を言いましょう。

まず「責任が重くなり、プレッシャーが増える」というのは確かにそうかもしれません。
しかし、責任が増えるということは、自由も増えるということです。責任と自由は表裏一体で、「自分で好きな働き方をしたい」、「自分で働きがいを獲得しやすいような自由を得たい」のであれば、責任を持ったほうがいいですよね。だから、自由を得るために責任が増えるというふうに考えると、プラスに変えられますよね。

2つ目の「プライベートの時間が減る」。いやいや、一般社員の方もそうでしょう。例えばチーム内の会議とか報告書のルールなどは、管理職が決められます。会議時間を60分ではなくて45分にしようと言えば、会議時間が25%も減ります。そうすると、プライベートの時間に割り当てられるのではないですか。管理職には、時間のコントロール権があるのです。

3つ目の「人間関係の悩みが増える」。これも一般社員でも同じでしょう。これについては、ズバリ期待値をコントロールすること。つまり、上司や部下に対する期待値をあまり高くしないこと。期待値を低くすることを習慣にしておけば、ちょっとしたことにも嬉しさを感じやすくなります。だから、日頃から期待値を下げておくということですね。

4つ目の「残業代がつかなくなる場合もある」については、管理職は手当をもらえますから。総合的には収入が増える人も少なくないのですよ。そうやって考えると、デメリットを消せるでしょう。マイナスのことだけを考えるのではなく、やりがいが増えるとか、自分でコントロールできるエリアが増えるとか、達成感が大きくなるとか、ぜひプラスの面を見て、管理職への昇格というキャリアアップの手段を前向きに検討していただきたいなと思います。


越川慎司さんのVoicy「トップ5%社員の習慣ラジオ」はこちらから! 今日から役立つ仕事のヒントやキャリアの参考データが盛りだくさん。
https://voicy.jp/channel/2708

越川慎司さんが「働きがい」について話してくださった記事はこちらから
https://meetscareer.tenshoku.mynavi.jp/entry/data_01/vo

いかがでしたか? 管理職になることは確かに大変そう。しかし、メリットに目を向け「働きがい」という観点でみると、管理職をめざすこともキャリアの選択肢になり得るのではないでしょうか。

「自分が主役のキャリア」を歩むために、自分に向いているのはどんな選択か。じっくり考えてみてくださいね。

<プロフィール>
越川慎司
国内外の通信会社に勤務後、ITベンチャーの企業を経てマイクロソフト社に入社。同社でPowerPointやExcel、Microsoft Teamsなどの業務執行役員を務める。2017年に株式会社クロスリバーを設立し、800社以上の働き方改革を支援。フジテレビ「ホンマでっか!?TV」の準レギュラーなどメディア出演多数。オンライン講座や年間400件以上、著書は直近7年で27冊にのぼる。

書き起こし・ミーツキャリア編集部

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